隠された宝
第10課 あずかった宝
「いいえ、宝物なんか持ってないですよ」
「さとこさんは？」
「うちはお金持ちじゃないから、宝物なんかないわ、おじさん」
「ところがじっさいは、健一君もさと子さんもおじさんも、人は誰でも、宝物をもっているんだよ。神様からお預かりしているといった方がいいかもしれないけれど……」
「えっ、それはほんとう？
「それでは、イエス様のしてくださった一つのたとえ話をしてあげよう」
1． 財産をあずかったしもべたち
ある金持ちの主人が旅に出かけることになったので、３人の召使いに財産をあずけることにしました。それぞれの能力に応じて、ある者には5タラント(ユダヤのお金の単位)、ある者には2タラント、ある者には1タラントをあずけました。
主人が出かけて後で、5タラントをあずかった者はそのお金を使って商売をし、ほかに5タラントをもうけました。2タラントをあずかった者も同じようにして、ほかに2タラントをもうけました。ところが、1タラントを渡された者は、地面をほってこの1タラントを地の中にかくしておきました。
だいぶ時がたってから主人が帰ってきました。5タラントをあずかっていた者は進み出て、
「ご主人様、あなたはわたしに5タラントをおあずけになりましたが、ごらんのとおり、ほかにも5タラントをもうけました」(マタイによる福音書25ノ20)
と言いました。
主人は喜んで、
「よい忠実なしもべよ、よくやった。あなたはわずかなものにも忠実であったから、多くのものを管理させよう。主人といっしょに喜んでくれ」（21節）と言いました。
2タラントをあずかっていた者も進み出て、
「ご主人様、あなたはわたしに2タラントをおあずけになりましたが、ごらんのとおり、ほかに2タラントをもうけました」（22節）と言いました。
主人は喜んで、このしもべをほめました。
最後に1タラントをあずかっていた者が進み出て、
「ご主人様、わたしはあなたがとてもきびしい方であることを知っていましたので、大切なお金をなくさないように、あなたの1タラントを地にうめておきました。ここにおあずかりしたお金がございます」と言いました。
これを聞いた主人はおこって、
「悪いしもべよ。わたしがきびしいことを知っていたのなら、わたしの金を銀行にあずけておくべきだった。そうしたら利子がもらえただろうに。さあ、このタラントをこの人からとりあげ、10タラント持っている人にやりなさい。そしてこの役にたたないしもべを外の暗いところに追い出すがよい」
と言って、このしもべを家から追い出してしまいました。
2． わたしたちがあずかっている宝は？
「イエス様は、わたしたちに何かを教えようとしてこのたとえ話をなさったのだよ」
「この話にでてくるしもべたちのように、ぼくたちも神様からタラントをあずかっているということだね」
「わかったわ、おじさん。わたしたたちは神様からいろいろな能力をおあずかりしている。それが宝なのでしょう？」
「よく気がついてね、さと子さん。わたしたちは神様からそれぞれ異なった能力をいただいているね。ある人は音楽の才能、またある人には文才、ある人は絵の才能、語学の才能、そのほかいろいろちがった才能をいただいているわけだ。またその才能も、天才的という人から、少々得意というていどの人までいるよね。わたしたちは、5タラントと2タラントをあずかったしもべのように、神様からいただいた才能を活用して、社会に奉仕する必要があるのだよ。せっかくの才能を地にうめておいてはいけない。能力を使ってこそ意味があるのだからね」
「おじさん、でもわたし、絵も下手だし、歌もだめだし、何も才能がないわ」
「そんなことはないよ、誰にでも能力が与えられているけれど、それが何であるかかわらないだけなのだよ。今は小さなことを何でも忠実にしておくことが大切なんだよ。家のそうじでも、お母さんのお手伝いでも、学校の勉強でも、自分の役割を忠実にはたしていると、大きくなってから、立派に社会い奉仕できるようになるよ。イエス様は『小事に忠実な人は､大事にも忠実である。そして､小事に不忠実な人は大事にも不忠実である』(ルカによる福音書16ノ10)と言っていらっしゃる。最後にもう一つ、本当にあった話をしてあげよう」
3． 音を出さなかったピッコロ奏者
アメリカの詩人シドニー･レニエは若いころ、ジョンズ・ホプキンス大学で学びながら、ボルチモア交響楽団でピッコロをふいていました。
コンサートのせまったある日、シドニーはオーケストラのメンバーといっしょにある曲を練習していました。ヴァイオリン、ビオラ、チェロ、トランペット、ホルン、ドラム、シンバルなど力強い音がひびき合って､美しいハーモニーをつくりあげています。若いピッコロ奏者のシドニーはふと「こんなものすごい大合奏なんだから、ぼくの小さなピッコロなんかふかなくたって誰にもわかりはしないだろう」と考えました。そしてピッコロを口にあててふりをしていたものの、音を出すのをやめてしまいました。
次の瞬間、指揮台で指揮棒をバンバンたたく指揮者の姿が目に入りました。
「ピッコロはどうしたんだ」と指揮者は大声でどなりました。
若いピッコロ奏者はふるえあがってしまいました。シドニーは、小さなピッコロが大オーケストラの中でそれほど重要な楽器だとは考えてもみなかったのです。しかしその時､どんな楽器でも美しいハーモニーをつくるための一部分をなしているということ、どんな楽器でも大切な役割をもっているということをさとったのでした。シドニーはそれいらい、学生のときも、詩人になってからも、どんな小さな役割でも自分のはたすべき分を忠実にはたしたのでした。神様は、小さなことでも忠実にはたして、与えられた能力をのばしていくことを望んでおられます。
まとめ
わたしたちはみな、神様からいろいろな能力が与えられています。わたしたちはこれを活用して、社会に奉仕する必要があります。自分の才能が何であるかわからない人もいるでしょう。しかし、今自分のするべきことを忠実にはたしている人は、大きくなってから立派に社会に奉仕できるようになります。
宝のことば
「小事に忠実な人は、大事にも忠実である。そして、小事に不忠実な人は大事にも不忠実である」ルカによる福音書16ノ10
1. 「宝のことば」を書いてください。
2. 5タラントをあずかったしもべはそのお金をどうしましたか。1を読んで考えましょう。
3. 2タラントをあずかったしもべはそのお金をどうしましたか。1を読んで考えましょう。
4. 1タラントをあずかったしもべはそのお金をどうしましたか。1を読んで考えましょう。
5. 主人は旅から帰ってきて、5タラントと2タラントをあずけたしもべたちの報告を聞いて何といいましたか。1を読んで考えましょう。
6. 主人は１タラントをあずけたしもべの報告を聞いて何と言いましたか。1を読んで考えましょう。
7. わたしたちが神様からあずかっている宝とは何のことですか。また神様はわたしたちがその宝をどうするように望んでおられますか。2を読んで考えましょう。
8. まだ自分の才能が何であるかわからない人はどうすれよいですか。２を読んでかんがえましょう。
9. この課を勉強して感じたことや、実行したいことなどがあれば書いてください。