隠された宝

第7課 本当の友達

「健一君とさと子さんには友達がいるかい?」
「友達は大ぜいいるけれど、本当に仲のいいのは三人くらいかな」
「わたしもそうだわ」
「きょうは二つのたとえ話をしてあげるか、本当の友達とはどういう人のことだか考えてみてごらん」

1. ぼろの服を着てみたら

いつもきちんと背広をきてネクタイをしめている立派な紳士が、ある日髪をぼさぼさにして、うすよごれたシャツを着て町をあるいてみました。まず、いつも行っている本屋さんにはいりました。いつものように本のページをパラパラとめくっていると、本屋の主人がめいわくそうな顔をしてじろりとこちらを見るのが目に入りました。美しく着飾った女性が二人、彼をさけるようにしてそばを通り、
「きたならしい。あんな人がどうして本屋に入ってきたのかしらね」
 とささやき合っていました。
 次に何かを食べようと、食堂にはいりました。こんでいたのですが、やっとあいている席を一つみつけ、
「ここにすわってもよろしいでしょうか」とたずねました。
ところが隣の席にすわっていた中年の女性は、いかにもきたならしいという顔でこの男をながめ、
「失礼ね。ほかの席をさがしたらどう?」と言うのでした。
 男はしかたなく、近くの弁当屋さんでにぎりめしを買い、公園のベンチにすわって食べはじめました。するとそれまで近くで遊んでいた子供たちは彼をさけるように、少しはなれた遊び場に行ってしまいました。一人の母親は彼の方をさして、
 「ほら、あの人を見てごらん。お母さんの言うことを聞いてちゃんとお勉強していないと、あんなふうになってしまうのよ」と言うのでした。

2. 強盗におそわれた旅人

あるユダヤ人がエルサレムからエリコに向かって旅をしていました。この道は岩の多い荒れはてた谷間にあり、強盗が出没するので、人々から恐れられている道でした。このユダヤ人も強盗におそわれないように心の中でお祈りしながら、道を急いでいました。
 その時、とつぜん岩かげから数人の強盗があらわれ、旅人におそいかかりました。
「さあさあ、殺されたくなけりゃ、持っているものをみな渡すんだ」
 強盗たちはそう言って、旅人の着物をはぎ取り、さらになぐりとばしして、彼が持っていた物をすべてうばい取り、逃げて行ってしまいました。
 深い傷を負った旅人は歩くこともできず、傷の痛みにたえながら、さびしい山道にみを横たえていました。「誰か通りかかって助けてくれないだろうか」旅人は苦しみのなかでそう願い続けました。
 どのくらいたった頃でしょうか。トットットッとかすかな足音が聞こえました。足音はだんだんこちらに近づいてきます。
「よかった。人だ。助かった!」
 旅人はそう思いました。痛む頭を足音のする方に向けてみると、それは立派な身なりの祭司でした。
 ところが祭司は、傷ついた旅人をちらりと見るなり、こんな人にかかわって自分が強盗におそわれては大変と、道の反対側を通って急ぎ足で立ち去ってしまいました。
 旅人はがっかりしてしまいました。が、すぐに、さっきとはちがった足音がまたきこえてきました。
「こんどこそ助けてもらえるだろう」
 通りかかったのは立派な着物を着たレビ人でした。レビ人というのは神殿で神様の仕事をする人です。旅人は「助けてください」と言おうとしましたが、声にはなりませんでした。レビ人は傷ついた旅人を見ると、あたりを見まわし、誰も人がいないのを確かめ、急いで逃げて行ってしまいました。それまで尊敬していた祭司とレビ人のこの行為は旅人の心に傷をつけました。傷の痛さに苦しみながら、がっかりした旅人はそのうち意識を失ってしまいました。
 ふと気がつくと、誰かが自分の傷をふいてほうたいをしてくれていました。よく見ると、それは日頃ユダヤ人と仲の悪いサマリヤ人でした。当時、ユダヤ人とサマリヤ人は南と北に隣り合った地域に住んでいながら、とても仲が悪く、ユダヤ人はサマリヤ人をさげすみ、サマリヤ人もユダヤ人をにくんでいて、たがいに話さえしなかったのです。
しかしこのサマリヤ人は、旅人を自分のろばに乗せて宿屋に連れて行ってかいほうし、次の日、宿の主人にお金をわたし、「この人をみてやってください。費用がよけいにかかったら、帰りがけにわたしが支払います」といたのでした。

3. 本当の友達とは

話し終えたおじさんは、健一君とさと子さんに次のような質問をしました。
「この強盗におそわれた旅人の本当の友人は誰だと思う?」
「そりゃあ、もちろん三人目の人でしょう」
「かいほうしてあげただけではなくて、後でかかった費用も払うなんてずいぶん親切な人ね」
「イエス様は、このたとえ話をなさった後で、『あなたも行って同じようにしなさい』とおっしゃったのだよ」
「自分に親切にしてくれる人に親切にするのはわりとかんたんだけれど、いじわるする人に親切にするのはむずかしいわ」
「おじさんの最初のお話のように、強い人、えらい人、立派な人には丁寧でも、弱い人や困っている人、貧しい人には冷たいという人が多いね」
「イエス様は次のように言っておられる。『敵を愛し、迫害する者のために祈れ。こうして天にいますあなたがたの父の子となるためである。天の父は、悪い者の上にもよい者の上にも、太陽をのぼらせ、正しい者にも、正しくない者にも雨を降らせて下さるからである。あなたがたが自分を愛する者を愛したからとて、なんのむくいがあろうか。……兄弟だけに挨拶したからとて、なんのすぐれた事をしているだろうか。……』(マタイによる福音書5ノ44−47
 イエス様は罪にけがれた私たち一人一人を愛し、わたしたちの罪のために十字架にかかって死んでくださることによって、本当の友達とはどういう人のことかという模範をしめされたんだね。聖書にも『人がその友のために自分の命を捨てること、これよりも大きな愛はない』(ヨハネによる福音書15ノ13)とかいてあるよ。わたしたちはもこのイエス様の愛にならって、どんな人でも愛し、助けていきたいものだね」

宝のことば

「だから、何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもその通りにせよ。これが律法であり預言者である」マタイによる福音書7ノ12

良きサマリヤ人

 30イエスが答えて言われた、「ある人がエルサレムからエリコに下って行く途中、強盗どもが彼を襲い、その着物をはぎ取り、傷を負わせ、半殺しにしたまま、逃げ去った。
 31するとたまたま、ひとりの祭司がその道を下ってきたが、この人を見ると、向こう側を通って行った。32同様に、レビ人もこの場所にさしかかってきたが、彼を見ると向こう側を通って行った。
 33ところが、あるサマリヤ人が旅をしてこの人のところを通りかかり、彼を見て気の毒に思い、34近寄ってきてその傷にオリブ油とぶどう酒を注いでほうたいをしてやり、自分の家畜に乗せ、宿屋に連れて行って介抱した。35翌日、デナリ二つを取り出して宿屋の主人に手渡し、『この人を見てやってください。費用がよけいにかかったら、帰りがけにわたしが支払います』と言った。
 36この三人のうち、誰が強盗に襲われた人の隣り人になったと思うか」。37彼が言った、「その人に慈悲深い行いをした人です」。そこでイエスは言われた、あなたも行って同じようにしなさい」。ルカによる福音書10ノ30−37
第7課 復習問題

1. 「宝のことば」を書いてください。

2. 強盗におそわれて傷ついている旅人を助けたのは、次の三人の中の誰でしたか。
  2を読んで考えましょう。
   a.祭司   b.レビ人  c.サマリヤ人

3. その当時ユダヤ人とサマリヤ人はおたがいにどう思っていましたか。2を読んで考えましょう。

4. イエス様はこのたとえ話をなさった後で何とお命じになりましたか。3を読んで考えましょう。

5. 3を読んで「   」の中にことばを書き入れてください。
   「     」を愛し、「     」する者のために祈れ。こうして「     」にいますあなたがたの父の「     」となるためである……あなたがたが「    」を愛する者を「     」したからとて、なんの「    」があろうか。
         マタイによる福音書5ノ44,46

6. ぼろの服を着てみるとどういうことがわかりますか。1を読んで考えましょう。

7. イエス様がわたしたちのほんとうの友達であることはどうしてわかりますか。3を読んで考えましょう。

8. この課を勉強して感じたことや、実行したいことなどがあれば書いてください。


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