隠された宝
第5課 新しく生まれる
「スチューネンバーグさんの息子さんが面会にきていますよ」
アイダホ州知事スチューネンバーグ氏殺害の罪で刑務所に入れられていた殺し屋のハリー・オチャードに、看守は告げました。オチャードはスチューネンバーグという名前を聞いたとたん身ぶるししました。何かしかえしに来たのではないだろうか。
しかし彼の前にあらわれたのは、心のやさしそうな少年でした。少年は、父親を殺した犯人を見ても少しふるえていましたが、勇気を出して、「母が、これをお渡しするようにいいましたので」
と言って、小さな包みをさしだしました。そしてさらに、
「母は、あなたがわたしたち家族にした恐ろしい罪をゆるすと言っています。あなたがキリストに心をささげ、神のみ国に救われることが母の願いなのです」
とつけ加えました。
スチューネンバーグ婦人の祈りといくどにもわたる訪問、そしてこの小さな包みの中に入っていた「キリストへの道」という本は、殺し屋オチャードの冷たい心をとかし、オチャードは自分の犯した恐ろしい罪を深く悔いるようになりました。彼は来る日も来る日も祈り、聖書を読み続けました。そして終身刑を言い渡され、一生の間刑務所の中で生活しなければなりませんでしたが、心は平安でした。自分のような人殺しの極悪犯でさえも､イエス･キリストはゆるして、み国に入れてくださるという聖書のみことばを読んで､彼の心は喜びに満たされていたのです。からだは鉄格子の中にあっても、心はキリストによって自由になったからなのです。
2．「きょう、救いがこの家にきた」
エリコにザアカイという税金をとりたてる人たちのかしらがいいました。彼は不正なとりたてや、きびしいとりたてをするので、人々からきらわれていたました。うわべは世俗的で、強がりを言っていたものの、心はそれほど冷酷ではなく、もっとまじめな生活をしたいと思っていました。 ちょうどその頃、貧しい人たちや恵まれない人たちにもやさしく接し、数々のきせきを行い、すばらしい教えをといておられるイエス様のうわさが耳にはいりました。どうにかしてこのイエス様にお会いし､そのおことばを聞いて悪い生活からのがれたいと思いました。ある日イエス様がエリコの町に来られるといううわさが町に広がりました。ザアカイは、イエス様のお顔をぜひ見たいと思いました。町の通りはすでに人々でいっぱいでした。イエス様が来ておられるというのです。
ザアカイは背が低かったので、人ごみに入ってしますと､とてもイエス様を見ることはできません。どうしてもイエス様の姿を見たいと思ったザアカイは道におおいかぶさっている大きないちじくの木に登り、イエス様がその下をお通りになるのを見ようと待っていました。しばらくすると､その木の下をイエス様がお通りになりました。イエス様はザアカイの心の中をすでに知っておられ、上を見上げ、
「ザアカイよ、急いで下りてきなさい。きょう、あなたの家に泊まることしているから」（ルカによる福音書19ノ5）
と言われました。
あまりにもすばらしいおことばを聞いてザアカイは大喜び。イエス様を自分の家に案内して、心からおもてなししました。自分のような罪びとに目をとめてくださったイエス様の愛に心を打たれたザアカイは、どうにかしてイエス様をお喜ばせしたいと思いました。そして今までの自分のしてきた不正を悔い、新しい、正しい生活をする決心をしたのでした。
「主よ、わたしは誓って自分の財産の半分を貧民に施します。また、もしだれかから不正な取立てをしていましたら、それを４倍にして返します」（ルカによる福音書19ノ8）これを聞いたイエス様は、
「きょう、救いがこの家にきた……人の子がきたのは、うしなわれたものを尋ね出して救うためである」（ルカによる福音書19ノ9、10）
といわれました。
2． 新しく生まれるとは
「イエス様って、本当にふしぎな力をもっていいらっしゃるのね。イエス様を信じると悪い人も正しい人になるのですものね」
「そうだよ。イエス様はどんな人でも、どんな悪いことをした人でもあいしていてくださるので、ザアカイのように、イエス様の愛におこたえしたい、イエス様にお従いしたいとおもうようになるのだよ」
「でも、ぼくなんか、ただしいことをしようとおもっても、ついつい悪い方にひきずれちゃって､決心してもなかなか実行できないんだよ」
「エレミヤ書13ノ23にこう書いてあるよ。『エチオピヤびとはその皮膚を変えることができようか。ひょうはその斑点を変えることができようか。もしそれができるならば、悪に慣れたあなたがたも、善をおこなうことができる』
自分ではげんでも清い生活をおくることはできないということなのだよ。
立派な行いをしていても、心の中で人によく思われたいとか、よい行いを見せびらかしている人もいるわけだ。殺人犯オチャードや収税人ザアカイの心を変えてくださったイエス様は、イエス様に従いたいと思う人の心を新しくつくり変えてくださる。これが新しく生まれると言うことなのだよ。
昔、イエス様のところにニコデモというユダヤ人の指導者が教えを聞きに来たときイエス様は『だれでも新しく生まれなければ､神の国をみることはできない』とおっしゃった。それをきいたニコデモは、『年をとった人が、どうしてもう一度お母さんのからだの中に入って生まれることができるのですか』とたずねたんだ。それに対してイエス様は､新しく生まれるということは、聖霊によってうまれるということなのだ、とおっしゃったのだよ。
「聖霊によってうまれるって、どういうことなの？」
「聖霊は、わたしたちひとりびとりの心に働きかけ、神様に従って新しく生きる決心をさせてくれるのだよ。聖霊はちょうど風のように目には見えないが、その働きによって知ることができるんだ。ローマ人への手紙8ノ26に『み霊もまたおなじように、弱いわたしたちがイエスにしたがうことができるようにたすけてくださるんだね』
「そうだよ」
「ハリー・オチャードもザアカイも聖霊によって心が変えられ、イエス様に従うようになったのね」
まとめ
生まれつき罪人であるわたしたちは、自分ではげんだだけでは正しい生活をおくることはできません。わたしたちは新しく生まれ変わらなくてはなりません。聖霊は人の心に働いて、心を新しくつくり変え、イエス様に従った正しい生活ができるように助けてくださいます。
宝のことば
「神よ、わたしのために清い心をつくり、わたしのうちにあたらしい､正しい霊を与えてください」詩篇51ノ10
収税人ザアカイ
1さて、イエスさまはエリコに入って、その町をお通りになった。2ところが、そこにザアカイという名の人がいた。この人は収税人のかしらで、金持であった。3彼は、イエスがどんな人か見たいと思っていたが、背が低かったので、群衆にさえぎられてみることができなかった。4それでイエスをみるために、前のほうにはしっていって、いちじく桑の木にのぼった。そこを通られるところだったからである。5イエスは、その場所にこられたとき、上を見上げて言われた、「ザアカイよ、急いで下りてきなさい。きょう、あなたの家に泊まることにしているから」。6そこでザアカイは急いでおりてきて、よろこんでイエスを迎え入れた。7人々はみな、これを見てつぶやき、「彼は罪人の家に入って客となった」と言った。8ザアカイは立って主に言った、「主よ、わたしは誓って自分の財産の半分を貧民に施します。また、もしだれかから不正な取り立てをしてましたら、それを四倍にして返します」。9イエスは彼に言われた「きょう、救いがこの家にきた。この人もアブラハムの子なのだから。10人の子がきたのは、失われたものを尋ね出して救うためである。（ルカによる福音書19ノ1−10）
1. ハリー・オチャードが刑務所の中でも平安な心でいられたのはなぜですか。1を読んでかんがえましょう。
2. ザアカイはなぜ人々からきらわれていたのですか。2を読んで考えましょう。
3. ザアカイは自分の生活に満足していましたか。2を読んで考えましょう。
4. イエス様の愛の心を打たれたザアカイはどんな決心をしましたか。2を読んで考えましょう。
5. 人は自分で決心したら、きよい、正しい生活を送ることができますか。3を読んで考えましょう。
6. 新しく生まれるとはどういうことですか。3を読んで考えましょう。
7. 3を読んで、ローマ人への手紙8ノ26を書いてください。
8. この課を勉強して感じたことや、実行したいことなどがあれば書いてください。