隠された宝

第2課 人を変える本

1. かくされたベストセラー

「この前は自然界の宝をさがしたけれど、きょうはこの本の中にある宝について考えてみよう」
おじさんはそう言って、黒い皮表紙の分厚い本をテーブルの上におきました。
「これ、聖書でしょう。この中に宝がかくされているの」
「中がくりぬいてあって、ダイヤでもかくされているのかな」
「いやいや、そんな宝じゃないんだ。聖書の宝というのは、内容が宝のようにすばらしいということなんだよ。
「聖書の中には『天国は、畑にかくしてある宝のようなものである。人がそれを見つけると隠しておき、喜びのあまり、行って持ち物をみな売りはらい、そしてその畑をみな売りはらい、そしてその畑を買うのである』と書いてあるよ」
「へえー、聖書ってそんなにすばらしい宝なの」
「外見はほかの本と変らないが、内容がちがうのさ。だから聖書はいつの時代にも、世界中で最もよく売れている本、つまり、ベストセラーなんだよ」
「ふーん。ぼく、もっと聖書のことが知りたいなあ」
「わたしも」
「聖書がどんなにすばらしい宝なのか、一つの話をしてあげよう」

2. ピットケアン島を変えたもの

 今から二百年ほど昔のこと、イギリスのブライという船長がバウンティー号という軍艦で、パンの木の実を探しに出かけました。ブライ船長は非常にきびしい人だったので、船員たちの不満がつのり、南太平洋のタヒチ島からの帰りに、とうとう反乱がおこってしまいました。その結果ブライ船長は仲間18人とともに、小さなボートに乗せられ漂流することになってしましました。しかし幸いなことに、飢えとかわきと、大変な苦労の末、ブライ船長と18人の仲間は無事に自分たちの国にたどりつくことができました。
 一方、反乱者たちはタヒチ島にもどり、何人かの男女を連れて南太平洋の小さな島ピットケアンに上陸し、ここに住むことにしました。彼らはバウンティー号から必要な品をすべて運び出すと、誰にも見つからないように船を焼いてしましました。しかしピットケアン島でも彼らは自分勝手な生活をおくり、酒を飲んではけんかをくり返し、たがいに傷つけ合ったり、殺し合ったりしていました。そのため10年間に15人の反乱者のうち14人が死に、生き残ったのは、ジョン・アダムス一人となってしまったのです。そのほかに子供が何人か生き残っていました。ジョンは男一人になってはじめて、まじめに将来のことを考えました。
「こんな生活はもうこれでたくさんだ。これからまじめに働いて、子供たちを立派に育て上げたい。だが、いったいどうしたらよいんだろう」
「その時思い出したのが、ブライ船長の聖書でした。
「そうだ、あれを読んでみよう。何か良いことが書いてあるかもしれない」
 ジョンは貴重品箱の奥にしまってあった聖書をとりだすと、むさぼるように読み始めました。聖書のみことばはジョンの心を動かし、ジョンはイエス様に従って生活したいと思うようになりました。今までの自分勝手な生活をあらため、子供たちにも聖書を教えました。大人たちの生活をまねて荒れていた子供たちも、ジョンの祈りと教えによってイエス様を信じるようになり、こうして酒と人殺しの島ピットケアンは太平洋の天国になったのです。今までもピットケアン島はクリスチャンの島としてしられています。

3. 聖書とは

「おもしろい話だね、おじさん。ところでジョンの心を動かしたっていう聖書はどんな本なの」
「聖書は、旧約聖書というイエス・キリストがお生まれになる前のことが書かれている書物と、新約聖書というイエス・キリストの時代から期限100年ごろまでに書かれた書物に分けられているんだ。旧約聖書も新約聖書も、またそれぞれ細かく分けられ、旧約聖書は39、新約聖書は27の書物から成り立っているんだ。内容も歴史の書、預言の書、福音書、手紙などさまざまだし、書いている人も王様、羊飼い、農夫、医者などいろいろな職業の人がいるんだよ。
 それに、最初に書かれた部分と最後に書かれた部分とでは1600年ものへだたりがあるのに、ふしぎなことに、聖書の教えには初めから終わりまでくいちがいがないんだ。これはそれぞれの著者が、テモテの第2の手紙3ノ16に『聖書は、すべて神の霊感を受けて書かれたものであって……』とあるように神様の導きによって書いたからなんだよ」
「聖書にはどんなことが書かれているの」
「さっきも言ったようにイスラエルの歴史とか、預言とか、イエス様や弟子たちの伝道の記録とか、手紙とかさまざまな部分から成り立っているんだけれど、聖書全体の中心テーマはイエス様とイエス様による救いなんだよ。このことについて、ヨハネによる福音書5ノ39には『あなたがたは、聖書の中に永遠の命があると思って調べているが、この聖書はわたしについてあかしするものである』と書かれているよ」
「おじさん、聖書って、分厚くて字も小さく、むずかしそうなので、今まで読んでもみなかったけれど、おもしろそうだね。ぼく、さっそく読んでみたいな。でもどんなふうによんだらいいの」
「健一君はもう中学生だし、さと子さんも6年生になったんだから、聖書をよんでみるといいね。では今度、聖書を読むときの心がまえを話してあげよう」
「楽しみだな。じゃあ、おじさん、またね」

まとめ

 聖書は日本でも世界でもベストセラーになっています。外見はふつうの本と変りありませんが、聖書には人の心を変えるふしぎな力があります。それは神様に導かれて書かれた本だからなのです。中心テーマはイエス・キリストとイエス・キリストによる救いです。
 みなさんもこのふしぎな書物を読んでみませんか。

宝のことば

「聖書は、すべて神の霊感を受けて書かれたものであって、人を教え、戒め、正しくし、義に導くのに有益である。」  テモテへの第2の手紙3ノ16


第2課 復習問題

1. 「宝のことば」をかいてください。

2. 世界中で最もよく売れている本は何ですか。1を読んで考えましょう。

3. ピットケアン島のジョンの生活を変えたものは何ですか。2を読んで考えましょう。

4. 聖書のそれぞれの著書は誰に導かれて書いたのですか。3を読んで考えましょう。

5. 聖書の中心テーマは何ですか。3を読んで考えましょう。

6. 1を読んで「  」の中にことばを書き入れてください。
『天国は、「     」に隠してある「    」のようなものである。人が
それを「     」と隠しておき、喜びのあまり、行って「     」を
みな売りはらい、そしてその「     」を買うのである。』
                 マタイによる福音書13ノ44

7.この課を勉強して感じたことや、実行したいことなどがあれば書いてください。


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